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2016年1月20日 (水)

古井戸に落ちたロバ

“Au Petit Matin”へ再びご訪問いただき、ありがとうございます。

今日は1冊の絵本のお話です。

1

「古井戸に落ちたロバ」


シンプルな絵と言葉が綴られた30ページあまりの、
時間にしてほんの数分もあれば読めるような、
短い物語です。

表紙には「インディアンのティーチングストーリー」とあって、
アメリカンインディアンに古くから伝わる話を
絵本にしたものだそう。


最初のページには、「ティーチングストーリーとは、
生きることを、教えるはなし。」と書かれていますが、
この絵本は、よくある寓話やたとえ話のように、
ためになる教訓や、何かひとつの正しい答えを
教えてくれるものではないようです。

人によって、また、たとえ同じ人であっても、
読む時期やその時の状況によって、感じ方が違う、
その時の自分の心の有り様を映す鏡のような、
そんな物語だと感じました。


さて、前置きが長くなりましたが、
どんなお話なのかといいますと・・・

1


ある時、年寄りのロバが、インディアンのじいさまに
連れられて荷物を運んでいたところ、誤って
使われていない古井戸に落ちてしまいました。

ロバが必死で這い上がろうとしても、
じいさまが何とか助けてやろうといっしょうけんめいに
考えても、古井戸はとても深く、どうにもなりません。


「たとえ大がかりなことをして助けても、
もう年寄りのロバは長くは働けない・・・
そして、古井戸をこのままにしておけば、
次に落ちるのは子どもたちかもしれない・・・」

そう考えたじいさまは、涙をのんで、
古井戸をロバごと埋めてしまうことに決めたのでした。

じいさまに頼まれた一族のものたちが井戸を埋め始めると、
穴の中からは、ロバの悲壮な鳴き声が響いてきます。

しばらくして、ロバの鳴き声が止み、古井戸が半分ほど
埋まった頃、じいさまは中を覗き込む決心をしました。


そして、古井戸の中を見たじいさまは驚きます。
なんと、ロバは井戸の中で生きていたのでした。


物語はここから、ロバの視点での描写が始まります。


古井戸に落ちた時、ロバは痛くて怖くてたまらず、
助けを求めて泣き続けました。

やがて、人の声が聞こえ、ホッとしたのもつかの間、
今度は突然、上から土が降ってきたのです。

ロバは泣きわめきながら暴れますが、そのうち疲れ果て、
暴れるのをやめた時、気づきました。

自分の体の上には、ほとんど土がつもっていないということに。

それから、ロバは、土が降りかかるたびに体を震わせて払い落とし、
足元のその土を踏み固め続け、少しずつ、少しずつ、
深い穴を登っていったのでした。


ロバが生きていることを知ったじいさまたちは、
夜通し古井戸に土を入れ続け、やがて、夜が明けるころ、
ロバは、やっと井戸から出ることができました。

2



井戸から出たロバはそのままゆっくり歩きだし、
「一度も振り返ることはなかった」

・・・と、物語は締めくくられています。


この物語が言いたいこと、伝えたいことは、
きっと一つではありません。
どう解釈するべきか、何が正しいか、に正解はないのでしょう。


去って行ったロバ
その後姿を、黙って見送ったじいさま

それぞれの心の中はどんなふうだったのか・・・

そんなふうに思いをはせて、感じることや答えは、
自分で見つければよいのでしょう。


私のまわりでも、この物語から感じたことは本当に人さまざまで、
それぞれの感想を伝え合うのも、また興味深いものでした。

そしてそれは、「生きる」とはどういうことなのか、という問いへの
それぞれのヒントや答えのようなものなのかもしれません。


絵本の物語を言葉で書き記しただけでは、
あまりうまく伝わらないかもしれませんが、
みなさんはどのように感じられたでしょうか。

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コメント

こんにちは hananoさん sign01

作者の意図は何かと、考えさせるお話ですね。happy01

前半で終わってしまいがちな話、でもそれで終わらないところがこの話 wink

まだ生きているロバを見て助けの手を差し伸べるじいさま、もがいても生きようと行動を起こしたロバ、その両方があってこの話に落ちができるようですね。smile

単純な背景ながら、いろいろな意思で運命が違ってくる、人生をも考えさせるお話ですね。bleahnote

投稿: プロフユキ | 2016年1月21日 (木) 01時25分

ニュースなどで見る、野生の動物、小さな飼い猫などの命を救うための活躍には命の大切さという教訓があり観る者にストレートな感動を与えますが、この物語は気持ちがさまざまに揺れますね。

おじいさんは広い視野で決断をした。ロバはかろうじて這い上がれたが、おじいさんに別れを告げる。どちらも辛い。
人の社会でも同じようなことが起きているに違いありませんね。深みを感じさせる物語です。

なんて優しい色合いの表紙ですこと。

投稿: おキヨ | 2016年1月21日 (木) 13時02分

プロフユキさんnote
こんばんは。
そうですね、きっと意図はひとつではなくて、
ロバの視点、じいさまの視点、それぞれの立場から
いろいろな見方、考え方ができるところが、
この物語の深さなのでしょうね。
私の周りでも、「きっとロバはじいさまに怒っていた!」とか、
「ロバの心は解放されたんだと思う」とか、
「やっぱり、人生、あきらめないことが一番大切だと思った」とか、
感想は人それぞれで、おもしろいです。


おキヨさんnote
確かに、「命の大切さ」をストレートにわかりやすく伝える物語は
感動を与えますが、このお話は、じいさまの立場、ロバの立場、
それぞれの視点や気持ちから、いろいろに思いをはせてしまいますよね。
どうしても決断しないといけない辛いこともある、
理不尽な境遇に泣きわめきたくなる時もある、
・・・そんな側面もあるのが人生でしょうが、
それでも、やはり「生きる」ことは何よりも強いもの、
そんなふうにも感じられました。

投稿: hanano | 2016年1月21日 (木) 19時19分

hananoさん、こんばんは。

小さな物語の中に無限の創造性を秘めているような深いお話ですね。

このブログを読み返しながら、終わった時にそれぞれ自分の中でも違う考えが浮かんで来ました。おじいさんからの視点、次のロバから見た視点、次に客観的に両方を眺めながら2人(1人と1頭)が取った行動に対する評価。
命を繋ぐのは希望なのか本能なのか・・・

人生に答えなんかないかも知れません。でもその答えを求めようと悩んだり苦しんだりするのかも知れません。それを否定的に捕らえているわけではありません。

おそらくこの物語において結果的に両方生きていた、穴に落ちて生死の境にいたとしても生き抜いていた。だからこそ私達はショックを受けずにこの物語を受け入れることが出来たと考えるのです。

生きる意味、生き抜いた意味がこの物語にはあるような気もしました

・・・済みません長々となってしまいました、考えさせることがこの物語の要点なのかも知れませんねcoldsweats01


投稿: omoromachi | 2016年1月21日 (木) 23時22分

omoromachiさんnote
こんにちは。
omoromachiさんのコメントにとても共感し、
多くを感じさせていただきました。

この物語を通しても感じましたが、
どんなことにも「答え」はひとつではなく、
また、誰かに結論を教えてもらうものでもなく、
結局は、自分で見つけ出すものなのかもしれませんね。

「命を繋ぐのは希望なのか本能なのか・・・」
とても深い疑問の言葉です。

"何のために生きるのか"は、誰しも一度は考える問いだと思います。
哲学、宗教、社会学、心理学、etc.・・
それぞれに、さまざまな答えがあると思いますが、
ある生物学の本に書いてあった言葉が印象的でした。
「すべての生物は、生きるために生きている」
一見、意味のないトートロジーのようですが、
その時の私の心に、いちばんストンと落ちました。
生きるために、生きていればいいんだ・・・と。

すみません、私も、長々としたお返事になってしまいました^^;

投稿: hanano | 2016年1月22日 (金) 12時12分

hananoちゃん、こんばんは。

ちょっとドキドキしながら読ませていただきました。
初めに思ったのは、ロバが生きていて良かった、ということ。
ロバの生きる力に感心しながらも、おじいさんとロバそれぞれの思いを考えると複雑です。。。
「ティーチングストーリーとは、生きることを、教えるはなし」という、前置きに納得。
ご紹介、ありがとうございますconfident

投稿: snufkin♪ | 2016年1月22日 (金) 22時01分

snufkin♪ちゃんnote
実はこの本、知り合いの小学生の女の子へのプレゼントとして
選んだものだったんだけど、中身を読んでみるといろいろ考えさせられて、
自分用にもう一冊買ってしまいました。
ロバが助かった後、喜んだじいさまが、もし「再び一緒に暮らそう」と言ったら、
ロバはどうしただろう・・・なんて思ったり・・・
さまざまな考えが浮かぶけど、やっぱり「生きていた」からこそ
より深く考えることができるのかなぁ、なんて感じました。

投稿: hanano | 2016年1月23日 (土) 13時18分

こんばんは(^^♪
いろんなことを考えさせられる絵本ですね。
はなのいろが思うには
同じ行為をしても
その人がどういう想いでそうしたかに因って
結果は違う形になるのではないかということ。
「何とかして助けたい」
「子供たちが落ちるのではないか」
それでロバは助かったのではないでしょうか。
ロバにもじいさまの深い想いが
届いていたに違いありません(と思いたい)。

投稿: はなのいろ | 2016年1月25日 (月) 22時24分

はなのいろさんnote
こんばんは!
本当に、シンプルだけど深くさまざまに考えさせられるお話ですね。
また、いろいろな方の感じ方を伺うのも、新しい視点に
気付かせてもらったりと、とても興味深いです。
はなのいろさんの感想からは、その優しいお人柄や思いやりの深さ、
心の豊かさが伝わってくるようで、胸が温かくなりました。
ブログを通してのお付き合いですが、はなのいろさんとお知り合いになれて
本当によかったと改めて実感しておりますheart04

投稿: hanano | 2016年1月25日 (月) 23時49分

はじめましてconfident由津子と申します。
ジンワリと心に残るストーリーです。

おじいさんはロバの落ちてしまった穴をふさがなくても、
子供たちが落ちないように、柵で囲むとか、何か工夫してみればよかったのでは…
と思ってしまいました。
最後、ロバは振り返ることもなく去ったいった…とは、
なんと、考えさせられるエンディングです。
怒らなかったロバは、おじいさんより人格?者だったのかもしれません。
許す心があったけど、無言の別れとなったのですね。

心に響く、ストーリーを教えて頂き、ありがとうございました。shine

投稿: 由津子 | 2016年7月10日 (日) 16時26分

由津子さんnote
はじめまして!
ようこそお越しくださいました。
ブログを通してこうしていろいろな方とお知り合いになれ、
交流できることは、私の何よりの楽しみです。
この絵本は、知り合いの小学生の女の子へのプレゼント用にと
選んだものだったのですが、読んでみるといろいろと
考えさせられることが多くて、自分用にもう一冊買ってしまいました。
人それぞれにさまざまな感じ方をされて、それを伺うのも
またとても興味深いのですが、由津子さんの感想にも
なるほど、なるほど・・と頷かされました^^
ロバもおじいさんも、一言では言い表せない、
複雑な気持ちを抱いていたのでしょうね。
こちらこそ、ご訪問いただき、コメントをどうもありがとうございました。
よろしければまたぜひお越しくださいねhappy01

投稿: hanano | 2016年7月11日 (月) 01時13分

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