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2018年1月 3日 (水)

エンドレス・ポエトリー

明けましておめでとうございます。

すっかり「季刊」のようになってしまっているこのブログですが、
みなさまお元気でお過ごしでしょうか。



先日、ある映画を見ました。


1


「エンドレス・ポエトリー」


88歳になるチリのアレハンドロ・ホドロフスキー監督が、
サンティアゴを舞台に、自身の少年期から青年期を描いた作品です。


2




少年時代、スペインの詩人ガルシア・ロルカの詩に夢中になるアレハンドロに、
「詩人は皆オカマだ、そんなものを読まず、生物学の本を読んで医者になれ」と
と激怒する抑圧的な父への反発。

家族との葛藤の中、ある日、従兄に連れられて訪れた芸術家姉妹の家で 、
ダンサーやピアニスト、画家といった若き芸術家たちと出会い、
詩人として生きる決意をした
アレハンドロは、家を出て、
彼らと交流するうちに、自身の魂が解放されていくのを感じます。

やがて、青年となった彼が出会うのは、
毒蛇のような真っ赤な髪の激しい女詩人との恋や
親の期待通りに生きることを拒んだ従兄の自死、
若い詩人との友情と詩への高揚した情熱。


自分の道を進むと決意しながらも、父親との確執に悩み、
自身を模索し、葛藤を抱えて生きる若きアレハンドロの隣に、
時折、未来の年老いた彼自身が登場し、語りかけ・・・



3



・・・と、こんなふうに紹介すると、
一人の芸術家の若き日々の物語、といった、
よくあるストーリーに聞こえることでしょうが、
実のところ、かなり奇抜でエキセントリックな映画です。

現実と妄想が入り混じったような映像に描き出されるのは、

通りに立てられたスクリーンのモノクロの街並みと書き割りの機関車

街を歩く住民たちは無表情な仮面を被り、
部屋の中には唐突に黒子が表れる

見世物小屋的な小人や大道芸人は奇声を上げ、
母親 のすべての言葉はソプラノの歌声となる

詩人たちが集まるのは、止まったような時間が流れるカフェ・・・



4



それは、極端に戯画化されて演劇的で、
詩的な言葉と奇異なエピソード、時に過激で 性的な表現が
ちりばめられた、凄まじいほどに強くて色鮮やかな独特の世界。

前衛的で、カルト的な世界観とも言えるかもしれません。


けれど、そこには、いわゆる「アンダーグラウンド」の
閉鎖的で排他的な感覚とは異なった、 すっと胸に落ちてくる
何かが、確かに存在していました。

物語の中から立ちのぼってくるような普遍的な優しさ、
肉体の温かさ、時に滑稽なまでの人間らしさ、慰め、
そして、人生への絶対的な肯定と生命の力強さが感じられるような、
決して難解ではない、美しい世界です。



5



存在する目的は?と自身に問いかけ、
年老いて死に朽ちて、すべてが忘却の闇へと消えていく
不快感に 苛まれる主人公。


主人公と同じく、人は、あらゆる負の感情を抱えて、
やっかいな自意識や受け入れられないものとともに、
時に苦しみ、模索しながら生きているのではないでしょうか。



実は私も、ここしばらく、なんとなく気持ちの晴れない日々が
続いていました。

何か特別な出来事が起こったとか、深刻な問題が生じた、
・・・というよりも、漠然とした、あいまいでネガティブな、
それでいて、どうしようもないような感情。


もちろん、日々、きちんと仕事をして、家庭での生活を送り、
ご飯を食べて、お風呂に入って、眠っているわけですが、
生きるためのエネルギーが低下しているような状態とでも
いうのでしょうか。


すべての物事は自分の気持ち次第。
幸せになる方法は、幸せを感じる心を持つこと。

・・・なんてことは、重々頭ではわかっているんだけど、
心がそれについていかない感じ。


そんな状況に、そんな気持ちに、とにかく「生きろ」と
背中を押してくれるような、というか、慈しみを込めて
後ろから思いっきり突き飛ばしてくれるような映画でした。



物語の終盤、街の大通りを埋め尽くしたカーニバルの
骸骨と赤い人々の集団の赤と黒の色彩は、
死と生が同じものであり、そこには眩しいほどに鮮やかな生命が
溢れんばかりに輝いていることを目に焼き付けてくれるような、
ひたすらに美しい光景でした。



7



この映画を表現しようとしても、私の貧しい語彙力では
すべて陳腐な言葉になってしまうだろうけれど、

ただただもう、人生を全肯定し、あるがままに受容し、
意味も終わりもない美しい探索を「生きろ!」と言ってくれた映画。



8



息が止まるくらい圧倒された気持ちでエンドロールを眺めながら、
きっと人生で忘れられない映画のひとつになると、 確信しました。

とにかく、生きよう。

そんなふうに思えた物語は、これから私の背中を押してくれることでしょう。



よい1年になりますように・・・





<映画のトレーラー>

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映画」カテゴリの記事

コメント

明けましておめでとうございます。

私は最近トンと映画を見なくなってしまいました。
そんな折、たまたま誘われてみたロダンとカミーユの映画が、以前公開された同様のロダンの映画と比べてあまりにもレベルが低くてがっかりしていたところです。

でも、映画が人生に大きな潤いを与えてくれるのは確かです。今年は改めて映画情報に注意を怠らないようにしたいと思っています。

とりとめのない話でごめんなさい。今年もよろしくお願いいたします。

投稿: gloriosa | 2018年1月 3日 (水) 19時46分

hananoさん、こんばんは。そして明けましておめでとうございます。

「Endless Poetry」全く知りませんが、hananoさんがそれ程感動する作品ですので、機会があればみてみたいです。
しかし保守的な私ですので、観て感激するのか、嫌悪感が募るのかのどちらかに大きく振れる映画のような気がします。

「生きろ」と言う強いメッセージ。おそらく人間の心は繊細で脆い所とがあるのですが、生物としての本能には「生き抜くこと」への強いメッセージが埋め込まれている気がしてなりません。

昔は悩むことは苦しいことでしたが、今は悩む自分を愛おしく思えるように努めています。

きっと生まれたことには何か意味があるのでしょう。肩の力を抜いて生きれたらいいなと思う1年にしたいです。

hananoさんも力を抜いてね。今年もよろしくお願いしますhappy01


投稿: omoromachi | 2018年1月 3日 (水) 21時55分

hananoさん、
新年おめでとうございます。

hananoさんもネガティブな日々に
身を置かれることもおありなのですね。
「すべては心の持ち方次第」がはなのいろのモットーですが
そうはいかないことも多々あり、
またそれが人間らしいのかも知れず…
背中を押してくれる何かを見出すのが
流石hananoさんと思いながら拝読しました。

穏やかで素晴らしいことに出会える一年となりますよう
お祈りいたします。

投稿: はなのいろ | 2018年1月 3日 (水) 22時08分

gloriosaさんnote
あけましておめでとうございます。
今年初めての記事へのコメントどうもありがとうございます。
昨年のロダンとカミーユの映画というと、
「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」でしょうか。
私は見ていないのですが、久々に出かけた映画がよくないと、
確かにがっかりしますね。
私も、昨年アメリカへ行く機内でたまたま見た邦画が
日本映画の将来が不安になるくらいひどい出来で、
機内映画といいながらも、ずいぶんがっかりしました。
何も高尚な映画ばかりが良いとか言うつもりはまったくありませんが、
同じ時間をかけて見るのであれば、何らかでも人生を
豊かにしてくれる作品と出会いたいものだな、と思います。
今年もどうぞよろしくお願いいたします^^


omoromachiさんnote
あけましておめでとうございます。
今年初めての記事へのコメントどうもありがとうございます。
「エンドエス・ポエトリー」、とても心に残る映画でしたが、
確かに前衛的な映像ですし、性的な表現なども結構出てくるので、
人によって好き嫌いがはっきり分かれる作品かもしれません。
かなりくせのある、万人向けの映画ではない気がします。
ただ、88歳の監督が人生の終盤で辿りついた(辿りつきつつある?)、
生きることへの絶対的な肯定感は、力強く胸に響いてきました。
『生物としての本能には「生き抜くこと」への強いメッセージが埋め込まれている』
本当に、私もそう思います!
私も、悩む自分を愛おしく思えるよう、肩の力を抜いて生きていきます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします^^


はなのいろさんnote
あけましておめでとうございます。
今年初めての記事へのコメントどうもありがとうございます。
頭ではわかっていることに、時として心がついて行かず、
どうしようもない気持ちに溺れそうになったりもするのが、
人間らしさなのかもしれませんね。
それもこれも、生きているからこそなのだと、改めて思います。
快適な道も、でこぼこの悪路も、しっかり自分の心のハンドルを握って、
時には弱音をはきながらでも、崖の下には転落しないよう気をつけて、
人生の風景を楽しんでいけたらと思います。
はなのいろさんにとっても、すばらしい出来事がたくさんある
1年でありますように。
今年もよろしくお願いいたします^^

投稿: hanano | 2018年1月 4日 (木) 19時26分

hananoさん、明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。とっても刺激的な今年第1回目のお話、
興味深い映画を教えてくださり、ありがとうございます。色彩も凄いですねshine
画面の中に入ってる色が、計算されてる芸術品な感じします。

どんな幸せを手にしたところで、私達が満たされない何か…とは?
今を生きなさいとは、神様は、「ただ在るということ」でいいのですよ…と
おっしゃってるようです。そして私達に体験してほしいことは、ただひとつ「喜び」だそうです。
新しい年になって、新しいhananaoさんの「喜び」みつけてくださいね。

投稿: 由津子 | 2018年1月 6日 (土) 14時54分

由津子さんnote
あけましておめでとうございます。
今年最初の記事へのコメントどうもありがとうございます。
個性の強い映画ですので、人によって好き嫌いがかなり
分かれる作品かと思いますが、色彩は確かに鮮やかで、
本当に美しかったです。
時にあれこれ考えてしまうのが人間なんでしょうけど、
究極の目的はただひたすら「生きる」ことなのでしょうね。
神様のような存在が私たちにただひとつ体験してもらいたいことが
「喜び」だとは、心の奥底から希望が湧いてくるようなお話です。
お互い、喜びにたくさん出会える年になりますように。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: hanano | 2018年1月 6日 (土) 17時37分

hananoさん、こんばんは happy01
遅ればせながら・・・
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

このブログを拝見して、ちょっとビックリしました。
何かいつものhananoさんらしくないな・・・と。
しかし前記事のように人生”Roller coaster”のようなもの。こんな気持ちの時もあって不思議ではありません。

>漠然とした、あいまいでネガティブな、
それでいて、どうしようもないような感情。
  ・・・・・・・・・・・・・
生きるためのエネルギーが低下しているような状態とでも
いうのでしょうか。

今の私にも言えることです。
2週間交代とはいえ母の介護に疲れ切って、やっと特養へ入所申し込みをしたものの、その後の自分の暮らし・・・この年齢でしかも頸椎ヘルニアの影響で障害がある身、仕事が見つかるのか・・・?
見つからなければ・・・いずれ”死”を選ばざるを得ない私です。
それだけにこの映画、私としてはとても気になります。
が、食べていくことが精一杯になった今の私では、見ることはできない・・・です (。_。)!

私のブログも季刊、いや気(まぐれ)刊になってしまいましたが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 慕辺未行 | 2018年1月 6日 (土) 23時43分

慕辺未行さんnote
あけましておめでとうございます。
今年初の記事へのコメントをどうもありがとうございます^^
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

悲しみや苦しみのない人生はないし、誰しも何らかの気がかりや
ストレスを抱えて生きているんだろうな、と思います。
私も、結構感情の起伏が激しい方なので(それでも、年齢とともに
ずいぶんなだらかになりましたが・・)、自分の気持ちを
持て余すような時もあります。
慕辺未行さんの大変さは、折々のブログから強く伝わってきます。
言葉も見つからず、何のお力にもなれないのがもどかしくも感じますが、
こうした交流がほんのわずかでも気持ちを軽くできれば、と
いつも心から思っています。
お母様のことも、仕事のことも、もちろん、よい方向へ
向かうよう祈っていますが、たとえ思うようにならなくても、
決して「死」だけは選ばないでください。
人生の最大の目的は、ただただ「生きること」です。
自然の寿命が来るまで生きることは、生命としての
義務ではないかと感じるようになりました。
お互い、生きていきましょう。

投稿: hanano | 2018年1月 7日 (日) 01時01分

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